【歯科技工士問題とデジタル歯科】
第2回:私が直面した歯科技工士問題
〜匠の技と後継者不足の現実〜
私は卒業直後から「赤坂会」という歴史あるスタディグループに所属し、歯科会の重鎮である寺西邦彦先生に師事してきました。ここでは、デジタルに頼らない職人技による高品質な治療が実践されていました。
たとえば、フルマウスでセラミックを焼成して咬合接触点を完璧に仕上げることや、お口に吸い付くような精度で部分入れ歯の金属フレームを適合させること。こうした技術は一朝一夕では身につかず、まさに匠の世界です。そして、その匠の技を実際に具現化するのが歯科技工士でした。優秀な技工士がいて初めて、歯科医師の理想を患者さんの口腔内に再現できるのです。
しかし、ある時期から私は深刻な問題を目の当たりにしました。
それは 若い歯科技工士がほとんど育っていない という現実です。
■ 歯科技工士の高齢化と人材不足
歯科技工士は本来、歯科医療を下支えする重要な存在ですが、その労働環境は決して恵まれていません。
- 長時間労働になりやすい
- 緻密な作業の繰り返しによる心身の負担
- 保険診療の報酬が低く、下請けとして収益が限られる
- グローバル化により、海外の低価格技工物との競争にさらされる
こうした背景から廃業する技工所が増え、離職率も高まり、新規参入が極めて少ないのです。結果として、技工士の人口は急速に減少し、平均年齢は上昇。もはや若い技工士を探すこと自体が難しい時代になってきています。
■ 私の葛藤と危機感
赤坂会では優れた技工士と共に治療を行ってきました。しかし彼らは皆、私より年上。
つまり「今は良くても、数年後はどうなるのか?」という不安が常につきまとっていたのです。
このまま技工士の高齢化と後継者不足が進めば、私が理想とする治療を再現することはできなくなる。さらに全国的に見ても、患者さんに提供できる補綴物の質や供給量が確実に落ちていくでしょう。
そこで私は、はっきりと自覚しました。
「このまま匠の技だけに頼っていては、将来必ず限界が来る」 と。
■ まとめ
赤坂会で学んだ匠の治療は今も私の基盤であり、理想であることに変わりはありません。
しかし、社会全体で歯科技工士が減少している現実を見たとき、次世代へつなぐ新しい方法が必要だと強く感じました。
次回の第3回では、私が なぜデジタル化に踏み切ったのか、その決断の背景と投資の実態 を具体的にお話しします。