歯科物語シリーズ⑦ 歯周病治療編
〜マイクロスコープと再生療法の最前線〜
歯周病は「歯を失う最大の原因」といわれ、成人の約8割が何らかの症状を抱えている国民病です。これまでの歯周病治療といえば、歯石を取ったり、大きく切開して歯肉をめくり、感染組織を除去するのが主流でした。しかし近年、マイクロスコープの普及により治療の精度は飛躍的に向上し、「なるべく切らない」「組織を再生させる」という新たなアプローチが可能になってきています。
1. マイクロスコープで変わる歯周病治療
マイクロスコープを使うことで、肉眼では見えなかったプラークや歯石の付着を確認でき、ミクロン単位での精密な除去が可能となります。従来のように大きく切開しなくても、ピンポイントで病変部にアプローチできるため、患者さんの負担は大幅に軽減されます。さらに小さな切開であれば血流も保たれやすく、治癒過程も良好になります。
2. 再生療法の進歩
歯周病で失われた組織(骨や歯肉)をどう再生させるかは、世界中で研究が進められてきました。再生療法では特殊な膜やエナメルマトリックスタンパクなどを用い、失った組織を誘導・回復させることが目的です。
私が特に尊敬しているのは、同級生でもある奈良嘉峰先生(茅ヶ崎開業)。彼は世界トップレベルのペリオドンティストとして国際的に活躍しており、歯周再生療法の最前線をリードしています。私は彼から直接術式を学び、実際に自身の口腔内で彼の手術を受ける機会にも恵まれました。その経験は、再生療法の凄さと世界基準の治療を身をもって理解する大きなきっかけとなりました。
3. 匠の技とエビデンスの両立
歯科の世界は「匠の技」が重んじられてきました。確かにテクニックセンシティブな分野であり、腕の良い術者が行えば劇的な結果が出ます。しかし、それだけでは医療としての普遍性がありません。再生療法が世界で注目されているのは、**「理論的根拠に基づく再現性」**を担保しているからです。
私自身は天才ではありませんが、正しい理論に沿ってマイクロスコープを活用し、適切な術式を選択することで、安定した結果を得られると確信しています。
4. 患者さんへのメッセージ
歯周病治療は「削る」「抜く」から「守る」「再生させる」へと進化しています。マイクロスコープによる精密治療と、科学的根拠に基づく再生療法の組み合わせにより、これまで失われたと思われていた組織も回復の可能性が見えてきました。
「もう歯を抜くしかない」と言われた方でも、治療の選択肢が広がっているのです。
まとめ
歯周病治療は、今まさに大きな変革期を迎えています。マイクロスコープによる精密な視野と、再生療法のエビデンスが融合することで、患者さんにとって負担が少なく、予知性の高い治療が実現できるようになっています。
次回のシリーズ⑧では「インプラント治療編」として、マイクロスコープがどのように外科領域で役立っているのかをご紹介します。