神経をとったのに歯が痛い ― その原因と正しい治療とは[桜新町の歯科医師が解説]
こもり歯科クリニック 院長 小森 真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医・桜新町)
「神経を取ったはずなのに、またあの歯が痛くなってきた」「根管治療が終わったと言われたのに、噛むと違和感がある」「膿んでいると言われて何度も治療しているのに治らない」――このような悩みを抱えて当院を受診される方が少なくありません。
神経を取った歯が痛くなるのは、一見「おかしい」と感じるかもしれません。しかし実際には、神経を取った後の歯が痛む原因はいくつかあり、それぞれに対応する治療があります。この記事では、「神経を取ったのに痛い」という状態の原因と対処法を、臨床歯科医の立場から解説します。
なぜ神経を取った歯が痛むのか ― 主な5つの原因
①根管内の感染の残存(最多の原因)
根管治療(神経の治療)の目的は、感染した神経組織と細菌を根管内から完全に除去し、無菌状態で封鎖することです。しかし根管は非常に複雑な形態をしており、分岐・湾曲・閉塞があるため、肉眼での完全な清掃は非常に困難です。感染組織や細菌が根管内に残ってしまうと、治療後も感染が継続し、根の先に炎症(根尖性歯周炎)や膿の袋(根尖病変)が形成されます。
これが「神経を取ったのにまた膿んだ」「また腫れた」という再発の最も多い原因です。治療した直後は症状が落ち着いても、数年後に再燃するケースもあります。
②根管の見逃し(未処置根管)
奥歯には根管が3〜4本以上存在することがあります。通常のX線写真(二次元)だけでは把握しきれない根管が存在し、処置されないまま残ってしまうことがあります。この未処置根管が感染源となり続けることで、治療後も痛みや炎症が続きます。CTによる三次元評価とマイクロスコープによる拡大視野が、見逃しを防ぐために重要です。
③根管充填の不完全さ
根管の清掃が完了した後、管を隙間なく封鎖する「根管充填」の精度が不十分だと、その隙間から再び細菌が侵入します。また充填材が根の先を超えて押し出されてしまった場合(オーバー充填)にも、周囲組織への刺激で痛みが続くことがあります。
④歯根破折
神経を取った歯は水分が失われてもろくなります。長年使用していると、噛む力によって歯根にひびが入ったり(歯根破折)することがあります。特に被せ物のない状態で長期間使用していた歯、または過剰な咬合力がかかっていた歯に起こりやすいです。歯根破折は通常のX線では確認が難しく、CTやマイクロスコープによる精密診断が必要です。破折の程度によっては保存が難しいケースもあります。
⑤歯周病の合併(歯内–歯周病変)
根管治療が必要な歯に歯周病が合併しているケースがあります。歯周病で歯を支える骨が根の先まで溶けていると、根管治療だけでは解決できません。根管治療と歯周病治療を同時に進める必要があり、「歯内–歯周病変」と呼ばれる複雑な病態です。診断には歯周組織の精密検査とCTが必要です。
「また痛くなった」を繰り返さないために ― マイクロスコープの役割
神経を取った歯の再発に対して最も効果的なアプローチが、マイクロスコープを使った精密再根管治療です。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)は根管内を最大20倍以上に拡大して確認しながら処置できる機器です。肉眼では見えなかった以下の問題に対処することができます。
- 感染組織・細菌の徹底的な除去
- 見逃されていた根管(MB2根管など)の発見と処置
- 根管内で折れた治療器具(破折ファイル)の除去
- 石灰化して閉塞した根管の開通
- 歯根破折の有無の確認
当院では開業当初から、保険診療・自費診療を問わず全症例にマイクロスコープとラバーダムを使用しています。「何度治療しても再発する」「他院でもう治らないと言われた」というケースのご相談を積極的にお受けしています。
再根管治療(感染根管治療)の流れ
すでに根管治療が行われた歯を再治療する場合の一般的な流れをお伝えします。
- CT撮影による三次元的な病変・根管形態の評価
- 被せ物・土台の除去(根管にアクセスできるようにする)
- 古い根管充填材の除去
- マイクロスコープ下での感染組織の徹底清掃
- 見逃し根管・破折ファイル・石灰化根管への対処
- 根管の三次元的な充填(封鎖)
- コアの製作と最終的な被せ物(セラミッククラウンなど)の装着
再根管治療は初回治療より難易度が高く、時間もかかります。しかし精密に行うことで、「また再発する」という悪循環を断ち切ることができます。
「抜くしかない」と言われた歯でも、一度相談を
根管治療の再発を繰り返した末に「もうこの歯は保存できない、抜くしかない」と告げられるケースがあります。この判断が正しいこともありますが、マイクロスコープとCTを使った精密な再評価によって保存できる可能性が残っているケースもあります。
歯を一本失うことは、隣の歯・噛み合わせ・将来の治療計画に連鎖的な影響を与えます。抜歯を決める前に、精密根管治療の専門的な評価を受けることは、セカンドオピニオンとして十分に意味があります。
根管治療後の歯を長持ちさせるために
精密な根管治療を行った後も、以下の点が再発防止と歯の寿命に直結します。
- 根管治療後はできるだけ早く適切な被せ物(セラミッククラウンなど)を入れる。仮歯・仮蓋のままでの長期放置は再感染リスクを高めます
- 噛み合わせの評価と調整。根管治療歯に過剰な咬合力がかかると歯根破折のリスクが上がります
- 定期的なメンテナンス。歯周病・二次虫歯の早期発見が長期安定につながります
当院では根管治療後の補綴設計(セラミッククラウンの形態・材質の選択)から定期メンテナンスまで、一貫して担当します。「治療して終わり」ではなく、長期的に歯を守るための管理を続けることが当院の方針です。
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