虫歯を20年放置するとどうなる?痛くても放置し続けた末路【桜新町の歯科医師が解説】
こもり歯科クリニック 院長 小森 真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医・桜新町)
「気づいたら20年、歯医者に行っていなかった」「歯が痛いのはわかっているけど、怖くてずっと放置している」――このような状態で来院される方が、当院には一定数いらっしゃいます。
20年という長期間の放置は、10年の放置とは状態が根本的に異なります。また「痛いのに放置する」という状況も、放置を続けるほど取り返しがつかない事態に向かっていきます。
この記事では、長期放置・痛みがあるのに放置した場合に口腔内で何が起きているか、そして今から何ができるかを臨床歯科医19年の立場から正直にお伝えします。
虫歯を20年放置すると、口腔内はどうなっているか
20年という歳月は、虫歯の進行にとって非常に長い時間です。ただし20年放置した全員が同じ状態になるわけではありません。進行の速さは虫歯の初期状態・口腔環境・唾液の質・食習慣などによって個人差があります。
しかし20年という長期間で、以下のような状態が複合的に起きていることが多いです。
①複数の歯が重篤な状態になっている
一本の虫歯を放置している間に、他の歯にも虫歯が発生・進行していることがほとんどです。20年間定期検診を受けていない場合、複数の歯が同時にC3・C4(神経まで達した・歯冠崩壊)の状態になっているケースが多いです。「どの歯から治療すべきか」という優先順位の整理が必要になります。
②歯周病が相当進行している
虫歯と並行して歯周病も進行しています。20年間プロフェッショナルクリーニングを受けていない場合、歯石が大量に蓄積し、歯を支える骨(歯槽骨)が大きく溶けているケースがあります。重度の歯周病は外科的な治療が必要になり、保存が難しい歯が出てくることもあります。
③噛み合わせが崩れている(咬合崩壊)
歯を失ったまま放置すると、隣の歯が傾いたり、対合する歯が伸びてきたりして噛み合わせが崩れます。20年という期間では、複数の歯の喪失・傾斜・挺出が組み合わさり、お口全体の咬合が大きく崩壊しているケースがあります。この状態の再建には、矯正・インプラント・補綴を組み合わせた大規模な治療が必要になることがあります。
④根の先に大きな病変がある
神経が壊死した歯を放置すると、根の先に膿の袋(根尖病変・歯根嚢胞)が形成されます。20年放置した場合、この病変が大きくなり顎の骨を広範囲に溶かしていることがあります。小さな根尖病変であれば根管治療で対処できますが、大きな嚢胞になると外科的な処置(嚢胞摘出術)が必要になることがあります。
⑤歯冠が崩壊して根しか残っていない
C4まで進行した歯は歯冠(歯の頭の部分)がほとんどなくなり、根だけが歯肉から出ていたり埋まっていたりします。この状態では多くの場合抜歯が必要になりますが、根管治療で根を保存し、その上に被せ物を作れるケースもあります。CTとマイクロスコープによる精密診査が保存できるかどうかの判断に必要です。
痛いのに放置し続けると何が起きるか
「歯が痛いのはわかっている、でも怖くて行けない・時間がない」という状態の方もいます。痛みがある段階での放置は特に注意が必要です。
痛みは段階を経て変化する
虫歯による痛みは、進行とともに変化します。最初は冷たいものでしみる程度です。次に何もしなくてもズキズキと脈打つような激しい痛みが出ます。そしてしばらくすると痛みが突然消えます。
この「痛みの消失」が最も危険なサインです。神経が壊死して感覚がなくなっただけであり、感染は根の先へと広がり続けています。「痛みが消えたから大丈夫」と放置が続き、気づいたときには根の先に大きな病変ができているというケースが非常に多いです。
感染が顎骨・全身に広がるリスク
根尖病変が拡大すると、感染が顎の骨全体に広がる「顎骨骨髄炎」を起こすことがあります。さらに重症になると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という首や顔への感染拡大が起き、気道を圧迫して生命に関わる事態になることがあります。これは稀なケースですが、「虫歯の放置が命に関わる」という現実は知っておいていただきたいことです。
痛みで食べられない・眠れない
歯の痛みは日常生活の質を著しく下げます。食事ができない・夜眠れないという状態が続くと、栄養不足・免疫低下にもつながります。痛みを放置することは、歯だけでなく全身の健康にも影響します。
痛みがある段階での放置は最も危険です。痛みが消えても「治った」ではなく「悪化した」サインです。痛みがある方はできるだけ早く受診してください。
「20年放置」「痛いのに放置」でも、今からできることはある
ここまで読んで「もう手遅れかもしれない」と感じた方もいると思います。しかし臨床歯科医として19年間、長期放置の患者様を診てきた立場から言えることがあります。
「手遅れ」という状態は、歯科においてほぼ存在しません。どんな状態でも「今できる最善」は必ずあります。
まず現状を正確に把握することから
20年放置した口腔内の状態は、診てみなければわかりません。「想像より状態が良かった」というケースもあれば、「予想より複雑だった」というケースもあります。まず現状を正確に把握することが、すべての始まりです。当院では初診時に口腔内写真・パノラマX線・必要に応じてCTで全体スクリーニングを行い、現状と優先順位を整理してお伝えします。
すべてを一度に治す必要はない
20年分の問題を一度に全部治そうとする必要はありません。まず緊急性の高いもの(痛みのある歯・急性感染)から対処し、次に歯を失うリスクが高いもの、その後に機能・審美の回復という順番で進めることができます。費用・期間・身体への負担を分散させながら、長期的に改善していくことが可能です。
痛みがある方は応急処置から
現在痛みがある方は、初診当日に応急処置を行うことができます。完全な治療は後回しにしても、まず痛みを取り除くことが最優先です。「痛みがあるから早く来てください」は、歯科医師として本心からお伝えしたいことです。
当院に来られた長期放置の患者様へ
20年ぶりに来院される方、痛みを何年も我慢してきた方を、当院では一切責めません。来てくださったことへの安堵しかありません。どんな状態でも、来院した日が「始め直し」の日です。
「こんな状態で行ったら怒られる」「笑われるかもしれない」という不安を持っている方がいれば、その不安は必要ありません。長年放置してしまった理由は人それぞれです。来てくださったことで、一緒に前を向くことができます。
まず現状を把握して、今できることを一緒に整理しましょう。
まとめ
- 20年放置した口腔内では、複数の歯の重篤化・歯周病・咬合崩壊・根尖病変が複合的に起きていることが多い
- 痛みがある状態での放置は特に危険。痛みが消えても悪化のサインであることがある
- 感染が顎骨・全身に広がるリスクがあり、稀に生命に関わるケースもある
- どんな状態でも「今できる最善」はある。まず現状把握から始められる
- 来院した日が始め直しの日。責めることは一切しない
桜新町・世田谷区周辺で長期放置・痛みを我慢している方は、まずこもり歯科クリニックにご連絡ください。現状を正確に把握した上で、今できる最善を一緒に考えます。
※症状・状態には個人差があります。この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断は初診時にご説明します。
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