歯周病は治る?進行度別に見る回復の可能性と、再発させないための考え方
桜新町の歯科医師が解説|こもり歯科クリニック 院長 小森真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医)
「歯周病は治りますか」という質問は、診療のなかでとても多くいただきます。これに対して、私はいつも「治る」とも「治らない」とも、ひとことでは答えないようにしています。なぜなら、歯周病が治るかどうかは、その方の進行度と、そもそも「治る」という言葉で何を指すのかによって、答えが大きく変わるからです。この記事では、歯周病の進行段階ごとに、どこまで回復が見込めるのか、そしてなぜ治療後の管理が欠かせないのかを、できるだけ正直に整理します。
「治る」が指す状態は、進行度によって変わる
歯周病という言葉は、実際には進行の度合いが大きく異なる状態を、ひとくくりにしています。歯ぐきの表面だけに炎症がある段階と、歯を支える骨まで失われた段階とでは、到達できるゴールがまったく違います。そのため「治る」と言うとき、それが「炎症が消えて健康な状態に戻る」ことを指すのか、「これ以上進まない状態を保つ」ことを指すのかを、分けて考える必要があります。
歯肉炎の段階:健康な状態に戻せる
炎症が歯ぐきだけにとどまり、歯を支える骨が壊れていない段階を歯肉炎といいます。この段階であれば、原因となる細菌の塊を取り除き、毎日のケアを整えることで、炎症のない健康な歯ぐきへ戻すことが期待できます。文字どおりの意味で「治る」と言える段階です。
歯周炎の段階:進行を止めて維持する
炎症が深く進み、歯を支える骨が溶けはじめた段階を歯周炎といいます。ここで知っておいていただきたいのは、いったん失われた骨や歯ぐきの付着は、自然に元どおりに戻ることは基本的にないという事実です。骨を再び増やすことを目的とした再生を図る処置もありますが、適応できる条件は限られています。したがって歯周炎では、炎症を抑えて進行を止め、その状態を長く保つことが現実的なゴールになります。
そもそも歯周病は、どのように進んでいくのか
歯周病の出発点は、歯の表面に付着する細菌の塊です。これが取り除かれずに残ると、歯ぐきに炎症が起こります。炎症が続くと、歯と歯ぐきのあいだの溝が深くなり、さらに奥へと細菌が入り込んでいきます。やがて炎症は歯を支える骨にまで及び、骨が少しずつ失われていきます。
厄介なのは、この進行の多くが痛みをほとんど伴わずに起こることです。痛みという分かりやすいサインが出にくいため、ご本人が気づいたときには、すでに骨の破壊がかなり進んでいることも少なくありません。歯周病が「静かに進む病気」と呼ばれるのは、このためです。
歯周病治療で実際に行うこと
治療の中心は、特別な薬で一気に治すことではなく、原因である細菌の塊を地道に取り除き、ご自身でも管理できる環境を整えていくことです。一般的には、次のような流れで進みます。
- 検査と診断(歯ぐきの溝の深さ、出血、歯の動き、骨の状態の確認)
- 原因の除去(歯石やプラークの除去と、毎日のケアの見直し)
- 再評価(処置後にどこまで改善したかを再び検査する)
- 必要に応じた外科的な処置や、骨の回復を図る処置
- 定期的な管理(メンテナンス)
このなかで見落とされがちなのが、再評価という工程です。処置をして終わりではなく、改善した部分と残った部分を見極めたうえで、次の対応を判断します。歯周病治療は、一度の処置で完結するものではなく、検査と処置を重ねながら状態を整えていく治療だと考えていただくのが正確です。
治療しても再発しやすいのはなぜか
歯周病は、治療によって炎症が落ち着いても、再発しやすい病気です。その大きな理由は、原因である口の中の細菌は、ケアを怠れば再び増えてくるからです。一度きれいになった状態も、毎日のケアと定期的な管理が続かなければ、もとに戻っていきます。
さらに、喫煙や糖尿病といった全身の要因、食いしばりなどによる歯への負担も、歯周病の進行や再発に関わることが知られています。これらの背景がある場合は、口の中のケアだけでなく、そうした要因への配慮もあわせて必要になります。つまり歯周病の管理とは、治療が終わってからが本番だと言っても言いすぎではありません。
当院が「治して終わり」にしない理由
私は、歯周病を含めたあらゆる治療を、その場の症状を消すためだけのものとは考えていません。治療した歯を、できるだけ長く、その方の人生の最後まで使い続けていただくこと。それを目標に置いています。歯周病の管理を重視するのも、同じ考え方の延長です。失った骨は戻りにくいからこそ、これ以上失わないように守り続けることに、大きな価値があると考えています。
そして、正直にお伝えしておきたいことがあります。歯周病は、進んでしまった部分を完全に元どおりにする魔法のような治療はありません。だからこそ、早い段階で気づき、進行を止め、維持していくことが何より大切なのです。
気になる症状があるときは
歯ぐきからの出血や腫れ、歯のぐらつき、歯ぐきが下がってきた感じなどが続く場合は、すでに歯周病が進んでいる可能性があります。痛みがないからと様子を見続けるうちに、進行してしまうことが多い病気です。気になるサインがある場合は、自己判断で放置せず、歯科医院での検査を受けることをおすすめします。早く気づくほど、守れる歯は多くなります。