10年ぶりの歯医者、何から始めればいい? ― その場しのぎで終わらせない、一度で治しきるという選択【桜新町の歯科医師が解説】
こもり歯科クリニック 院長 小森 真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医・桜新町)
「もう何年も歯医者に行っていない」「最後にいつ行ったか思い出せない」。そんな状態で、ようやく受診を考え始めた方に読んでいただきたい記事です。久しぶりの歯医者は、勇気がいるものです。だからこそ、せっかくのその一歩を「とりあえず痛い所だけ」で終わらせてほしくない、と私は思っています。10年ぶりの受診を本当に意味のあるものにするために、何から始めればいいのかをお伝えします。
「何年も行っていない」こと自体を、責めるつもりはありません
まず安心していただきたいのですが、長く歯医者から足が遠のいていた方は、本当に多くいらっしゃいます。痛くなかった、忙しかった、怖かった——理由はさまざまで、それを責めるつもりは私にはまったくありません。大切なのは、過ぎた時間ではなく、これからどうするかです。今日その一歩を踏み出そうとしていること自体が、すでに前向きな選択です。
長く空いた口の中では、「全体」が変わっています
ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。10年という時間は、口の中の一か所だけでなく、全体を変えるのに十分な長さです。
虫歯や歯周病は、痛みのないまま静かに進みます。歯を失ったまま放置すれば、空いたすき間に向かって隣の歯が傾き、噛み合っていた相手の歯が伸びてきます。こうして、一本の問題が、時間をかけて口全体のバランスへと広がっていきます。つまり、久しぶりに受診される方の口の中は、「一本だけの問題」であることはむしろ少なく、全体が少しずつ動いてしまっていることが多いのです。
最初の一歩は、「痛い所を治す」ことではありません
こうした状態で、多くの方が「まず一番気になる歯を治してほしい」とおっしゃいます。その気持ちはよく分かります。けれど、全体がどうなっているかを把握しないまま、目立つ一本だけを直すと、しばらくしてまた別の歯が壊れる、ということが起こりがちです。崩れた力の配分が残ったままだと、治療がいつまでも追いかけっこになってしまうのです(この仕組みは「噛み合わせ全体が崩れてきた方へ」で詳しく書いています)。
ですから、久しぶりの受診で本当に最初にすべきは、痛い所をすぐ削ることではなく、まず口全体の現状を正確に知ることです。レントゲンやお口の中の記録から、何が起きていて、何を優先すべきかという全体像をつかむ。遠回りに見えて、これが一番の近道です。
そのうえで、お金と手間の「配分」を一緒に考えます
全体が見えて初めて、「どこから、何に、お金と手間をかけるか」を一緒に考えられます。すべてを一度にやる必要はありません。優先順位をつけて、保険で丁寧に対応する部分と、長くもたせるために価値のある部分とを、配分していきます。
一回ごとの出費を抑えても、その場しのぎを繰り返せば、結局はお金も時間も積み上がっていきます。一方で、最初に全体を見据えて配分すれば、一生という単位では、むしろ無駄が少なくなることもあります。私が大切にしているのは、患者さんに、本当に価値のあるところにお金をかけてほしい、ということです。
ただし、全員に大きな治療が必要なわけではありません
誤解のないように言い添えます。久しぶりに来られたからといって、すべての方に大がかりな治療が必要なわけではありません。長く空いていても、幸い大きな崩れがない方もいます。そういう方には、必要最小限で十分だと正直にお伝えします。逆に、すでに崩れが進んでいる方には、早めに手を打つことで進行を緩められることをお話しします。どちらにせよ、まず正確に診てからでなければ、何も決められません。「久しぶり=高額な治療を勧められる」ではない、ということは、安心していただきたいのです。
久しぶりの受診を、できるだけ快適にするために
久しぶりの歯医者が不安なのは当然です。当院では、その負担を少しでも減らせるよう、いくつかの工夫をしています。カウンセリングも診療も個室で行い、人目を気にせず相談できる環境を整えています。お口の中の写真やレントゲン、デジタルの記録を使って、今どうなっているかをご自身の目で見ていただきながら説明します。痛みにも十分に配慮します。また、何度も通うのが難しい方には、一度の時間を長くとって通院回数を抑える進め方もご相談いただけます。初診の方へのページや、短期集中治療もあわせてご覧ください。
10年ぶりの一歩を、「最後まで使える口」への一歩に
臨床医としての私の究極の目標は、患者さんのお口の状態を、人生の最後まで——大げさに言えば、天国まで——良い状態で持っていっていただくことです。今、入れ歯でない方には、一生入れ歯にならずに済むための対策を。すでに入れ歯を使っている方には、より快適に使えるよう手を加えていく。
せっかく勇気を出して久しぶりに来られるのなら、その一歩を、その場しのぎの一回ではなく、長く使える口づくりの出発点にしてほしい。それが私の願いです。まずは現状を知ることから始めましょう。当院では、口全体を診たうえで、今後の見通しを正直にお伝えします。「今日は話を聞くだけ」でも構いませんし、遠方からのご相談も歓迎しています。費用は料金表にまとめていますので、あわせてご覧ください。ご相談はお問い合わせから承ります。