高齢の親の歯が心配なご家族へ ― 「もう歳だから」とあきらめる前に知ってほしいこと【桜新町の歯科医師が解説】
こもり歯科クリニック 院長 小森 真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医・桜新町)
「親の入れ歯が合わず、うまく食べられていない」「歯がぐらぐらで、食事の量が減ってきた」「歯医者で、もう全部抜くしかないと言われたらしい」。離れて暮らす、あるいは一緒に暮らすご家族から、こうしたご相談をいただくことが増えています。そして多くの方が、心のどこかで「もう歳だから、仕方ないのかな」と感じていらっしゃいます。この記事は、高齢のご家族の歯を心配されている方に向けて、あきらめてしまう前に知っておいてほしいことをお伝えするものです。
「もう歳だから」と、あきらめていませんか
高齢のご家族の歯が悪くなってくると、「今さら治療しても」「本人もつらいだけでは」と、ご家族のほうが先にあきらめてしまうことがあります。お気持ちはよく分かります。けれど、年齢そのものが治療を受けられない理由になることは、実はそれほど多くありません。大切なのは、年齢ではなく、その方の体の状態と、これからの暮らしに何が一番合うかです。
「噛めること」は、思っている以上に健康と生活を支えています
歯の問題を「食べにくい」という不便さだけで捉えると、つい後回しになりがちです。しかし、しっかり噛めることは、栄養をとること、ひいては全身の健康や活力に関わっています。噛めなくなると、食べられるものが限られ、食欲そのものが落ち、知らないうちに体力が落ちていく——そうした流れは、ご高齢の方では決して珍しくありません。
さらに、食べる楽しみ、人と会話すること、表情——噛み合わせは、こうした生活の質や、その方らしい毎日にも深く関わります。だからこそ、ご高齢の方にとって噛めるようにすることは、「歯を治す」以上の意味を持つことがあるのです。
高齢でも、治療はできます ― ただし「その方に合った範囲で」
当院には、80代、90代の方の治療をご家族とともに進めてきた経験があります。年齢が高いというだけで、治療をあきらめる必要はありません。ただし、若い方と同じ計画をそのまま当てはめるわけではありません。体への負担をできるだけ小さくし、その方の全身状態や暮らしに合わせて、無理のない範囲を考えます。
たとえば、合わない入れ歯に少し手を加えて快適にすることが最善のこともあれば、少数のインプラントで入れ歯を安定させ、もう一度しっかり噛めるようにすることが最善のこともあります。大切なのは、できる限りの治療を詰め込むことではなく、その方の人生の時間に、ちょうど合う治療を選ぶことです。実際にどのような治療を行ってきたかは、症例集でご覧いただけます。「全部抜くしかない」と言われた場合の考え方は、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
ご家族が抱きやすい不安に、お答えします
ご家族からよくいただくご心配に、あらかじめお答えしておきます。
- 通院の負担が心配:一度の時間を長くとり、通院回数をできるだけ抑える進め方をご相談いただけます(短期集中治療)。体調に合わせて無理なく進めます
- 持病や服用中の薬がある:全身の状態を踏まえたうえで計画を立てます。無理はしません
- 本人が歯医者を嫌がる:まずはご家族だけでのご相談でも構いません。本人のペースを大切にします
- 施設への入居を控えている:入居の前にできることを、時間の中で一緒に考えます
- 費用が心配:かかる費用は料金表にまとめています。価値とのバランスを一緒に考えます
大切なのは、「本人にとって何が一番か」を一緒に考えること
私が大切にしているのは、過剰な治療を勧めることでも、年齢を理由に最初からあきらめることでもありません。ご本人の希望と、これからの暮らしに、何が一番合うのか。それをご家族と一緒に考えることです。ご本人の意思と尊厳を何より大切にしながら、できることとできないことを正直にお伝えします。「やらない」という判断も、立派な選択肢の一つです。
ご家族だけのご相談でも、どうぞ
私の目標は、患者さんのお口を、人生の最後まで——大げさに言えば、天国まで——良い状態で使い続けていただくことです。ご高齢のご家族にとって、最後まで自分の口で美味しく食べられることは、何よりの幸せの一つだと思います。
まずはご家族だけで、現状をご相談に来ていただいて構いません。ご本人を連れてくる前の段階でも大丈夫です。当院では、今どうなっていて、何ができるのかを正直にお伝えします。他院での説明に迷われている場合のセカンドオピニオンも歓迎していますし、遠方からのご相談もお受けしています。ご相談はお問い合わせから承ります。