インプラントは何年もつ? ― 「入れて終わり」にしないための設計と長期管理【桜新町の歯科医師が解説】
こもり歯科クリニック 院長 小森 真樹(臨床歴19年・日本顎咬合学会 指導医・桜新町)
インプラントは、決して安い治療ではありません。だからこそ「何年もつのか」を知りたいというお気持ちは、当然だと思います。正直にお答えすると、インプラントの寿命に「何年」という決まった答えはありません。同じインプラントでも、長く快適に使い続ける方もいれば、早くに駄目にしてしまう方もいる。その違いを生むのは、入れる前の設計と、入れた後の管理です。この記事では、インプラントの寿命を本当に左右するものは何かをお伝えします。
「何年もつか」に、決まった答えはありません
「インプラントは10年もつ」「20年もつ」といった言葉を目にすることがあるかもしれません。しかし実際には、もつ年数は人によって、また一本ごとに大きく変わります。だから私は、「何年か」という問いそのものより、「何が長持ちを決め、何が早期の失敗を招くのか」を知っていただくほうが、ずっと役に立つと考えています。そして、その答えのほとんどは、入れる前と入れた後にあります。
インプラントが、天然の歯と違うところ
まず知っておいていただきたいのは、インプラントは天然の歯とは構造が違うということです。天然の歯には神経があり、歯と骨の間にはクッションの役割をする組織があります。一方、インプラントにはそれがありません。
これが意味するのは、インプラントは天然の歯のように「痛み」で異常を知らせてくれにくい、ということです。インプラントのまわりにも、歯周病によく似た炎症(インプラント周囲炎)が起こることがありますが、これが痛みのないまま静かに進むと、気づいたときには支えの骨が失われていることがあります。痛みで警告してくれないからこそ、管理の重要性はむしろ高い——これがインプラントの特徴です。
寿命を左右するのは、まず「入れる前」の設計
インプラントが長くもつかどうかは、手術そのものの上手さ以上に、その前の設計で大きく決まります。具体的には、次のような点です。
- 何本を、どこに、どの向きで入れるかを、最終的な噛み合わせのゴールから逆算して設計しているか
- 噛む力が、インプラントの一点に集中しないように配分されているか
- 骨や歯ぐきの環境を、入れる前に十分に整えているか
とくに噛み合わせの力の配分は重要です。口全体のバランスを無視して一本だけ入れると、そこに過剰な力がかかり、長持ちしません。だからこそ、口全体を診たうえで設計することが欠かせないのです(この考え方は「噛み合わせ全体が崩れてきた方へ」でも詳しくお伝えしています)。私は日本顎咬合学会の指導医として、噛み合わせを基準に、デジタルで口全体を把握したうえでインプラントの設計を行っています。
そして、寿命を左右する「入れた後」の管理
入れる前の設計と同じくらい大切なのが、入れた後の管理です。インプラント周囲炎を防ぐための定期的なメンテナンス、噛み合わせが年月とともに変化していないかのチェック、毎日の清掃。これらが続くかどうかで、その後の寿命は大きく変わります。
逆に言えば、「入れて終わり」にしてしまうと、せっかくのインプラントも静かに失われていきかねません。長くもたせるために本当に必要なのは、入れた瞬間の技術だけでなく、その後ずっと続く管理なのです。
だから私は、「入れて終わり」にしません
臨床医としての私の目標は、患者さんのお口の状態を、人生の最後まで——大げさに言えば、天国まで——良い状態で持っていっていただくことです。インプラントも、その一部です。設計から手術、その後の管理までを一人の医師が一貫して担当し、十年後、二十年後を見据えて診ていく。それが、インプラントを「一生もの」に近づける唯一の道だと考えています。
「早く・安く」より、「長くもつ」を
インプラントは、入れることがゴールではなく、その後どれだけ長く、快適に噛めるかにこそ価値があります。目先の早さや安さだけで選ぶと、結局やり直しになり、かえって負担が大きくなることもあります。一生という単位で見れば、設計と管理にきちんと手をかけたインプラントのほうが、結果的に価値の高い選択になることが多いのです。どこにお金と手間をかけるべきか——その判断を、私は患者さんと一緒に考えたいと思っています。
インプラントを検討している方へ
インプラントを考え始めたら、まずは口全体を診たうえで、そもそもあなたにインプラントが本当に最適なのか、最適だとして何本をどこに入れるべきかを、診断から始めることをおすすめします。他院でインプラントを勧められて迷っている方のセカンドオピニオンも歓迎していますし、遠方からのご相談もお受けしています。
関連して、抜歯と同時にインプラントを入れる方法や、「全部抜くしかない」と言われた方への当院の考え方もご覧ください。治療内容は欠損補綴のページ、実際の治療例は症例集、費用は料金表にまとめています。ご相談はお問い合わせから承ります。